人間翻訳は消滅しない?AIの時代でも人間翻訳が必要な理由を解説

AIの進歩に伴い、機械翻訳の技術は加速度的に進歩しています。また機械翻訳ツールは簡単かつスピーディーに用いることができるため、いまや誰でもある程度の翻訳が実現できるともいえるでしょう。
そんな中機械翻訳と対照的に、プロ翻訳者による「人間翻訳」の必要性が議論される機会が増えています。そして中には「人間翻訳が消滅する」という意見を述べる方もいます。
では、本当に翻訳において人間翻訳は必要がなくなってしまうのでしょうか。
本記事では、機械翻訳の進歩を踏まえたうえで人間翻訳が必要な理由について解説します。
「SNSやインターネットでは、しばしば人間翻訳が消滅するという意見もみられます。しかし本当にそれらの意見を鵜呑みにしていいのか、本記事をもとに考えてみてください!」
なぜ人間翻訳は消滅すると言われている?
人間翻訳が消滅すると噂されている理由は、機械翻訳の技術が向上しているためです。機械翻訳とは、コンピュータを使って自動的に、特定の言語で書かれ書かれた文章を別の言語に翻訳する技術やシステムを指します。
具体的には、以下の3点で機械翻訳への期待が高まっているとされます。
- 機械翻訳の精度:複雑でない文章の場合は、Google(グーグル)翻訳や、DeepL(ディープエル)翻訳などを用いることで自然な翻訳ができるようになっている。
- コスト面:大量の文書を低コストで翻訳したい場合は、人件費がかかる人間翻訳に比べて機械翻訳の方が安く対応できる。
- 翻訳スピード:機械翻訳のほうが、よりスピーディーに翻訳してくれる。
Google翻訳・DeepL翻訳含め、機械翻訳ツールは誰でも簡単に使うことできるため、翻訳に詳しくない方でも翻訳ツールを用いて翻訳ができる時代に突入しているといえるでしょう。
人間翻訳は必要!その3つの理由について
①機械翻訳特有のエラーが発生することがある
機械翻訳の場合は、プロ翻訳者による人間翻訳では起こりにくい、下記のようなエラーが発生してしまう可能性があります。
- 原文に登場する数字や略語が、訳文では別のものに置きかえられていることがある
- 同じ文書内で用語や表記を統一できないため、訳ブレする
- 原文にない文言が訳文に追加されてしまうことがある(ハルシネーション)
- 文章単位で訳抜けすることがある
②誤訳のリスクが高い
上記で挙げた訳抜け・原文にない訳文が追加される可能性も含め、機械翻訳のみで翻訳を行う場合は人間翻訳に比べて誤訳のリスクが高いでしょう。理由は、翻訳会社にて人間翻訳を行う場合、多くは翻訳者のあとに校正者が訳文を検証する機会が設けられるためです。また原文に誤字があった場合でも、文脈を読み取ることを徹底し、より適切な翻訳で対応できるよう最善を尽くします。機械翻訳の場合は、上記で挙げたような人間翻訳でできる「柔軟さ」を実現することが現状は難しいでしょう。
また機械翻訳ならではの誤訳が起こるケースもあり、英日翻訳においては例えば以下のような誤訳事例があります。
- “Historical Data(過去のデータ)” → 機械翻訳の場合は「歴史的データ」と訳された
- “Work Pressure(作業圧)” → 機械翻訳の場合は「仕事のプレッシャー」と訳された
- ※作業圧とは、機器などが正常に動作するために必要な最小の圧力を指します。
- “Manual Override(手動切り替え)” → 機械翻訳の場合は「手動の無効化」と訳された
③専門分野の対応が厳しい
機械翻訳は原文を直訳する際に役立つ一方で、専門分野をはじめとした文書の場合は適切に訳すことが難しいとされます。翻訳は、言語圏文化や原文の背景部分まで理解したり、直訳に加えて意訳・言い換え・省略などを場面ごとで使い分けたりする必要があるためです。
ここでいう専門的な文書の例は、例えば以下のようなものがあります。
- 技術文書:特定の分野における独自の専門用語や職業用語を用いた文書
- 文学作品:詩や風刺など
- ビジネス文書:契約書、公的文書など
- 販促物:カタログ、パンフレットなど
機械翻訳と人間翻訳の使い分けが重要
上記では機械翻訳のデメリットについて言及しましたが、一方で機械翻訳は人間翻訳にはないメリットもあります。例えば機械翻訳はコスト面で優れている、翻訳スピードが速いなどがあるため、それらの利点を踏まえて人間・機械のどちらで翻訳していくか判断することをおすすめします。
以下、機械翻訳を用いるべき場面の例になります。
- ニュースなど、スピード感をもって高い更新頻度が求められる場合
- 日常の中の比較的容易な文章を翻訳したいとき
- 社多少の不自然さがあっても使用に問題のない文書
- なにが書いてあるかとりあえず知りたい、といった内容確認の場合
また、最適な翻訳手段の1つとしてポストエディットに注目が集まっています。ポストエディットとは、機械翻訳で翻訳された文書を翻訳者の手で編集することを指します。機械翻訳を用いることで発生するエラーや、機械翻訳では表現しきれない部分を補完することができるため、とても有効といえるでしょう。
まとめ
本記事では、人間翻訳が現代において必要な理由について解説しました。
機械翻訳のクオリティは飛躍的に向上していますが、それでもなお人間翻訳が必要な場面はたくさんあります。ぜひ人間翻訳・機械翻訳のメリットとデメリットを把握したうえで最適な選択をできるようにしてください。
特に高品質が求められる文書は、経験豊富な人間による翻訳が欠かせません。
Word Connectionは人間による正しくて高品質な翻訳にこだわる翻訳会社です。約600名の翻訳者が当社に登録し、日本語を軸に、欧州言語を中心とした翻訳・ローカライゼーションサービスを展開しています。そしてライフサイエンスやIT、法律文書などの産業翻訳だけでなく、書籍や絵本などの出版翻訳まで幅広く対応しています。
参照ページ
作業圧が“仕事のプレッシャー”?英和機械翻訳のヒヤリ誤訳事例と注意点|Manual Hub(マニュアルハブ)
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